みかけ年代

天然のトリウムは,質量数232の同位体を主体とし,ウランには,質量数235の ものと238のものがあります.トリウムやウランは時間と共に放射線を出しな がら別の元素にかわります(放射壊変).そして,最後に鉛になります.鉛にな ると,それ以上放射壊変することはありません.

ウランやトリウムの量と,時間τの間にできる鉛の量は,次の式で表されます.

208Pb = 232Th(eλ232τ - 1): λ232 = 4.9475 × 10-11

207Pb = 235U(eλ235τ - 1): λ232 = 9.845 × 10-10

206Pb = 238U(eλ238τ - 1): λ238 = 1.55125 × 10-10

トリウムウランを含むモナズ石,ジルコン,ゼノタイムの中には,上の式のよ うにしてできた鉛と,鉱物ができたときにもともと含まれる鉛(初期鉛)が含ま れています.鉱物中の鉛の総量(全鉛)は,

全鉛 = 初期鉛 + 232Th (eλ232τ - 1) + 235U(eλ235τ - 1) + 238U(eλ238τ - 1)

という関係があります.

この式を,現在のウランの同位体存在量(238U/235U=137.88)を用いて書き直す と,

全鉛 = 初期鉛 + Th(eλ232τ - 1) + U(eλ235τ + 137.88eλ238τ - 1) / 138.88 - 1

となります.全鉛,ウラン,トリウムの量はEPMAで測定できますが,初期鉛が わからないと年代τを計算することができません.そこで,アイソクロン法を使って計算します.

また,この初期鉛を0と仮定した年代を「見掛け年代」と呼びます.ジルコンやモナズ石のように,形成時にはほとんど鉛を含まない鉱物ではアイソクロン法による年代に近い値が得られます.

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